小説

『神さまなんて信じない』さくらぎこう(『わらしべ長者』)

 地方から東京へ出るには、大学進学は絶好の機会だった。行きたい大学があったわけではなく、ただ東京の大学でありさえすれば良かった。
 そんな不純な動機で大学進学を果たしたためか、入学しても勉強はろくにせずバイトや遊びに明け暮れていたため、卒業の単位が取得できず留年が決まった。
 学費は4年間しか払わないという父の言葉通り、きっちり4年の3月分を最後に仕送りは止まっていた。
 僕は大学を辞め、生活費はバイトで稼ぎながら就活をしたが、正社員で雇ってくれる会社はなかった。卒業していないということがこれほど就職に響くとは思ってもいなかった。
 飲食店のバイトで生活をつないでいたが、金銭的に余裕のない毎日に嫌気がさしていった。彼女とも別れ、大学の友人は次第に連絡が来なくなっていた。皆就職をし新入社員として働いているのだ。僕は社会人として落ちこぼれだった。
 落込む気持ちを紛らわそうと、家賃に支払う金をパチンコに使った。金が増えることはなく生活はますます追い詰められていった。

 家賃を払えない。不動産屋からはこれ以上滞納するなら今月いっぱいで部屋を出ていくようにと言われている。
 残された手段は、オヤジに頼み込んで金を振り込んでもらうか、借金をするか、ホームレスになるかだ。その3択しかない。
 オヤジに頼むはナイと思った。あのオヤジが助けてくれるとは思えなかった。第2の返す当てのない安易な借金は自己破産が待っているだけだ。バイト仲間がローン地獄に填まり、自己破産した という話を聞いたばかりだった。ホームレスはもっとあり得ない。
 八方塞がりだった。

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