小説

『なんとなく楽しい日』真銅ひろし(『浦島太郎』)

 ただ、これで諦めて帰るのも癪なので校門に回り校庭を覗くことにした。
 校門からタイムカプセルが埋まっているだろうと考えられる木はギリギリ見えた。しかし見えた所でなす術はない。校門をよじ登って入ろうとするのは流石にまずい。
「ん~~~。どうすっかなぁ。」
 とりあえずどうすればいいか頭を巡らすが何も思いつかない。
「・・・。」
 ジッとしていても不審者に思われるかもしれない。とりあえず一旦帰るか。そんな思いになった。
「あの、こちらに何か御用でしょうか?」
 突然横から声をかけられた。見ると校門の隣の通用口らしき所から教員と思わしき男性が出てきた。
「あ、いえ。そういうわけではないんですが。」
「生徒の保護者の方でしょうか?」
「いえ、それも違うんですが。」
「先程からずっと校舎を見ておられるようでしたが。」
「あ、すいません。」
「・・・。」
「・・・。」
 不審者を見る目がビシビシと伝わってくる。年齢は同じくらいだろうか?ただヒョロヒョロのこちらとは対照的に、肌は健康的に日焼けをしていて、短髪、体つきもがっしりしている。得意な科目は体育だろうと一発で推察できる。
「あの、えっと、すいません。あのここの卒業生で、なんとなく懐かしくなって覗きに来てしまいました。だから怪しいとは思うんですが、怪しいものではないです。」

1 2 3 4 5 6 7 8 9