『選ぶって上から』
志水菜々瑛
(『花いちもんめ』)
ある日先生が告げた。「今日から花いちもんめは禁止です」禁止の理由は、いつも最後の一人にミチを残したから。先生からの通告で5年2組の花いちもんめブームは過ぎ去ったが、中学生になったある日、再び花いちもんめをすることになる。
『バランス オブ ワールド』
中村市子
(『羅生門』)
友介は同級生の財布を盗んだ現場を真面目な学級委員長の紗栄子に目撃される。紗栄子は 怒るでもなく、なぜか友介が履いていた白ブリーフを奪って行く。友介は紗栄子が白ブリーフを奪った理由を考えるうちに彼女の優しさに気づくのだが、そこには一つ大きな計算ミスが起こっていることを発見する。
『彼女が求めた赤』
斉藤高谷
(『地獄変』)
観る者を圧倒する絵を次々に描き、〈天才〉と謳われた女子高生ヨシノ。彼女は絵のモチーフとして様々な無理難題を要求しては、美術部の顧問を困らせていた。あるとき「真っ赤な薔薇が欲しい」と彼女が言い出し、顧問の〈俺〉はお安い御用と請け負ってしまう。
『満開の花が咲き誇る日を』
ウダ・タマキ
(『オオカミ少年』)
僕の人生は不幸ばかりだ。二年連続の受験失敗に母親の病気。この先もずっとこんな人生が続いていくのではないか、なんて考えている時に出会った一人のおじいさん。おじいさんの話を聞くことで、僕の気持ちは少しずつ前向きになっていくのだった。
『雀の子』
珊瑚
(『舌切り雀』)
戦前が舞台。子を流した私に対し、夫は余所に作っていた娘を引き取ると伝える。私は愛憎に揺れながらも、素直な娘を可愛がり、仲良く暮らす。娘の食物アレルギーが判明し、私はつい、駄々をこねる娘の舌を切ると脅す。娘は家を飛び出し誤って死ぬ。私は空想のつづらから思い出を取り出して眺める。
『古びたゴール』
大村恭子
(『わがままな巨人』)
2週間入院していた「私」が久しぶりに自宅に帰ると、庭にある古びたバスケットボールを囲って近所の子供達が勝手に遊んでいた。子供達を追い出したもの、その後毎晩、嫌な夢ばかり見てしまう「私」。しばらくして、再び庭で遊び始める子供達。そんな中、一人の少年が目につくようになる。
『恋人がゾンビになってしまったら』
乘金顕斗
(『山月記』)
もし恋人がゾンビになってしまったら、なんて想像、したことなかったけれど、修ちゃんがゾンビになってしまった今、改めて想像してみるとして、それならもっとこう、なんていうかな、それっぽい感じがあったんじゃないかと、ゾンビになった彼を見て私は思う。
『ある山月記 変わらない二人』
立原夏冬
(『山月記』)
ある山の中、袁傪は、若いころ都で役人としてともに働いていた李徴と再会する。李徴は虎と化した我が身を嘆くが、袁傪には人の姿のままとしか見えない。思い違いだと伝えようとする袁傪に対し、李徴は一向に聞く耳を持たず、ついには四つん這いになりあたりを駆け回り始めるが…
『小さな世界の姫と太郎』
春野萌
(『浦島太郎』『かぐや姫』)
グループからはじき出された亀ちゃんを救った縞子(しまこ)はクラスの中心人物、愛都(おと)のターゲットとなり教室へ行けなくなってしまう。SNSアプリ、玉手箱が受信するメッセージも開けられないまま登校した特別室で、不思議な雰囲気を持つ佳久耶(かぐや)と出会い穏やかな時間を過ごしていく。
『この世でいちばん』
霜月透子
(『白雪姫』)
幼いころ、私たちは仲のいい美人親子と評判だった。しかし、年を重ねるごとに私は大人びた美しさになっていき、母は老いの片鱗が見え始める。そのころから母は私をあからさまに敵視するようになった。家に居づらい私は公園で過ごすことが増え、そこで一人の青年に出会うのだった。
『ゼペット爺さん殺人事件』
五条紀夫
(『ピノッキオの冒険』)
東京郊外の民家にて一人の老人が殺害された。就寝中に鋭い凶器で胸を一突きされたことによる失血死だった。室内に荒らされた様子はなく、怨恨による犯行との見方が強い。しかし犯人を示す物証は何もなかった。唯一の手掛かりは一人の、いや、一体の、木の人形のみ……。
『ベッドの上の攻防』
のらすけ
(『ヤマタノオロチ』)
妻が買い物に出かける間の2時間。父親である俺は1歳に満たない娘の世話をひとりですることに。熟睡をしていた娘だが、途中で目を覚まし、怪獣を化す。その事態を想定していた俺は、事前に準備を整えていた策をもって、その怪獣と対峙する。怪獣の猛攻を全身で受け止めながら奔走する。