小説

『テロテロ坊主ゲロ坊主』ヰ尺青十(『オイデプス』『人、酒に酔ひたる販婦の所行を見る語:今昔物語集巻三十一第三十二』『太刀帯の陣に魚を売る媼の語:同巻三十一第三十一』)



 翌月@ねる駒。
「けっけっけー、褒められちゃったよ、くわっくわっくわー」
 雉、怪鳥の如く雄叫んで、がぶごぶ、ごんぶり、ごうむ。純米大吟醸『猫又』16%をあおる。
「いいんですか、痛風おさまったばっかなのに」
 猿橋が気遣うのに、
「まあまあ、お猿さん、心配は無用」
「あの、その呼び方って不快です。雉野又さん、いつも〈ヨビハラ〉とか言ってるじゃないですか」
「かっかっか、こりゃあ、一本取られた」
 雉は上機嫌で、自分の報告書が総理から賞賛されたのだ。大学教育の無償化を導入しようとするも、反対に遭って難儀していたところ、雉野又の報告書が後押しする結果になった。さらに、厚労省としても、若年層が強炭酸高アルコール低価格飲料に嵌まって次々と中毒になるのを懸念していたので、この種の飲料を規制すべしという雉野又の付帯意見は大いに利用価値がある。
 他方、鬼沢局長は腐っていた。マタジロウと呼んでるのが投書されて、本省から叱られたのだ。匿名で行ったのが又次郎なのは周知の通りである。
「あー、もう、愉快痛快奇々怪々ってなあー、ほら、犬丸さんも呑んで呑んで」
「あ、ども。でも、あの、ほんとにだいじょぶなのかなあ」
 犬猿、案じながら雉の酌で盃を重ねてると、
「ようし、もう、ね、あれだよ、気分がいいから謎々出しちゃう」
ひっく。天麩羅を賭けようぞ。
 気分と謎々の間にどういう関連性があるのか、犬猿が解せずいるのも構わず、
「AKB48とAK47だとどっちが強いか?」
「なんなんですか、そのAK47って」
「ヒント無し。益荒男ならば臆せず選べ選ぶべし」
「じゃあ、まあ、人数が多いみたいなんで、AKB48かと」
「ファイナルアンサー?」
 犬猿、しぶしぶ頷いた。その刹那、雉が箸伸ばして犬の下足天を奪い、間髪入れずに猿の掻き揚げも取ってシャクシャク。
「ざーんねん、正解はAK47。ロシアの軍用カラシニコフ突撃銃だから、小娘の合唱団なんか木っ端微塵よ、けっけっけー」
 ごぶがぶ、ごおぶ。
 翌朝、雉が痛風の餌食となったのは言を俟たない。教訓、雉も呑まずば撃たれまい。



*1 猫舌の人に羹(あつもの)を強要したり、猫肌(熱い風呂がNG)の人に高温入浴を強要したりすること。
*2 猫口(塩分の多い物がNG)の人に高塩分食を強要すること。
*3 12世紀末に鬼角氏に滅ぼされた猫丸一族の末裔集団。超猫舌猫肌猫口且つ黒陰嚢等の遺伝特性を共有する。

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