小説

『飲み込んだ涙のゆくすえ』間詰ちひろ(『浦島太郎』)

 いままで見てたのは、夢だったのかな? と、朦朧とした意識の中で、史郎は左のズボンのポケットに手を当てた。すると、硬いものが手に触れた、正方形の、箱のようなものだった。
 ああ、やっぱり夢じゃなかったんだな……。
 この箱は、ずっと大切に持っていなきゃいけないんだ。
 蓋を開けないで、ずっと……。
 そう思いながら、史郎はまた、目を閉じたのだった。

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