「小説読ませてよ」
「うん、マジ最高傑作だからー」
「え?」
タイトル『親戚のオバハン』軽いめまいを覚えた。しわくちゃの原稿用紙を受け取って絶句した、八枚だった。中身を読んで悶絶しかけた、優子さんが主役だった。
原稿用紙をそっとちゃぶ台に置いた。
「ね、神レベルでしょ。俺は小説の神になったかも!」
ふと脳裏に小説終盤の『人非人』が浮かぶ。神と言われてひとでなしの意ではなく緊那羅(きんなら)に無理やり結び付ける。『ヴィヨンの妻』でわからない言葉はネットで調べた。
「まあ、一作目にしては書けたんじゃない。二作目はもっと良くなるんじゃないの」
何のために小説の再現をしたのかわからないが、考えないことにした。穰一の自由に書いたほうが、きっといい作品が生まれるのだろう。
「二作目とか必要ないでしょ『親戚のオバハン』で新人賞とるわー。今だから言っちゃうけど、俺、さっちょんや蓮太郎に、いい暮らしをさせたいからさ。なにがなんでも『親戚のオバハン』で決めるっしょ!」
私は格別うれしくもなく「いや、無理だから」と言いました。