『キョウ子さんとだんご』
田中かほり
私が薬剤師として介護施設の所属調剤部に従事していた頃、忘れられない女性がいます。仮にキョウ子さんと呼ばせて頂きます。キョウ子さんと初めて出会った時、キョウ子さんは他の入居者さんと交わる事もなく、セルロイドの人形を両手で握りしめ、ソファアで一人佇んでいました。
『在りし日とこれから』
関乃縁
妻が認知症になり、夫はこれまでの生活を思い返していた。やがて娘とともに秘められた妻の想いに気がついていく。そしてやがて訪れる瞬間。
『合わない帳尻』
村田謙一郎
亭主関白を貫き、祖母や母に対して高圧的な態度を取ってきた祖父は、耳が遠くなり、認知症の症状も現れていた。だが私は、祖父は本当は耳にも脳にも問題はないのではと思い聞くと、祖父はそれを肯定した。しかし病に倒れ、認知症が進むにつれ、祖父はこれまでと全く違う顔を見せるようになる……。
『淡い恋心』
金谷祥枝
今年95歳になる美恵子さんは、3年前まで一人で生活していました。料理が得意だった美恵子さんでしたが、調理中、煮物を作っている事を忘れて鍋を焦がすことが増え、物忘れが多くなり、心配した親族が同居を提案しましたが、本人の希望で老人ホームへ入居することになりました。
『ばあちゃんと旅人』
宮沢早紀
主人公の俺は認知症の祖母の愚痴を母から聞かされる度に複雑な思いを抱いていた。俺が久々に祖母に会いにいくと「長旅から帰ってきた人」と認識される。祖母のおかしな勘違いにはじめは戸惑いつつも、俺は前向きに捉えて接する。そんな俺と、普段より楽しそうな祖母の姿に母の気持ちも変化していく。
『彼と彼の父』
室市雅則
僕はバーのマスターから彼の父が認知症であることが判明した経緯を聞いた。カウンター越しに聞いた話をかいつまむ。
『26歳と80歳、ともに駆け抜ける青春の日々』
河合はつね
26歳のわたしと80歳の認知症のある女性の交流を綴った、実話に基づくエッセイ。エッセイを通して「認知症のある人=介護をしなければいけない人」という従来のイメージを大きく覆します。まるで同い年のように、共に生きるふたりの姿、どうぞご覧あれ。きっと、新たな感動と大きな発見があるはず。
『祖父への旅路』
源孝一
私は「認知症の人」が苦手だった。そんな私の祖父が認知症になった。祖父が認知症になった事を受け止められなかった幼少期から祖父と向き合いたくて社会福祉学の道に進んだ現在までの道のりは一つの旅のようだった。認知症を知りたくて、小さな一歩を踏み出したちっぽけでありふれた私の半生を綴る。
『天国のおじいちゃんへ』
沖村里枝
私の曽祖父は3年間在宅介護の末、十六年前に他界した。当時、私は高校生で、大腿骨骨折を機に寝たきり生活、そして、食事も少量となり、ついに経管栄養をしている姿がとても怖かった。そして、大好きだった曽祖父が認知症の影響からだんだんと暴言が増えていった。