それはかつて男が造り上げた夢の場所だった。テーマパークを作りたいという幼い頃から思い描いた夢を叶えるも、時と共に経営は立ちゆかなくなり、やがて男は全てを失う。芭蕉の詠んだ句と重ね、夢果てた地で夏草を前にぼんやりと佇む男の前に一人の青年が現れて──
会社をリストラされた平田の再就職先はなかなか決まらなかった。そんなとき、ふとある会社の求人情報のチラシを目にして応募をしてみると採用が決定した。その会社は勤務条件や福利厚生もよく人間関係もいい素晴らしい会社だった。しかし、平田は徐々に会社のやり方に違和感を覚えることに……
父の失踪以来、母親と慎ましやかな二人暮らしを営むジャック。毎日硬く茶色いパンを食べる生活。その生活は、ジャックの我慢と異常な過去の上に成り立っていた。贅沢を毛嫌いする母親に耐え兼ね、家を飛び出すジャック。彼が逃げたその先、豆の木の上で彼はその過去を思い知る。
大学の総務課長と勤める吉良の元へ、四七名の来客があると連絡がある。目的は、吉良の額を割って懲戒免職となった浅野という教授の処分への抗議らしい。四七人は前代未聞だ、と呆然としている間に、事態は進んでいき……。
明日は娘の誕生日だ。空木は明日早く帰るために、その日遅くまで残業し終電を逃してしまう。タクシーを拾おうと社を出ると一台のタクシーが玄関前に滑り込んできた。居酒屋タクシーだった。乗り込むとタクシーは行燈を赤提灯に替えて走り出すのだが…。
大学生の私は、日夜ボロアパートで東洋史研究を行っている。そんなある日、隣に絶世の美女が引っ越して来た。しかし惚れたのも束の間、どうやら彼女には彼氏がいるらしい。落ち込んだ私は「恋なんてするな!」という内容の『恋愛孫子』を編んだ。そんな私の前に、恋に悩める少年が現れて――。
五枚入り九十八円の梅ガムの『私』は、買われるのを待つ間、自分が最後には吐き捨てられてしまうお菓子であると仲間から聞かされる。食べてもらうことで子供を笑顔にする夢を持つ『私』はその話を信じられなかったが、やがて購入者が現れたのをきっかけに、現実を知ることになるのだった……。
ごく普通の若い会社員、斉藤浩一はある飲み会の帰りに「堪忍卵」を購入した。それに向かって愚痴を吐けばたちどころにすっきりする不思議な卵は、やがて斉藤の生活必需品となる。だが、徐々に卵に異変が現れて……。
メガネ女子の文月ナツメはクラスで最低カーストのみじめぼっち。しかし、ゲームセンターでは「DDR(ダンスダンスレボリューション)」という機体で神と呼ばれる達人プレイヤーだった。同じく神の大学生に片想いをしている彼女。クラスメイトのボクは彼女をかわいく変身させて彼女の恋を応援するが……。