『過去』
宮下洋平
(『過去世』)
フリーライターの吉沢七郎は父と二人の弟を同時に亡くす。ある日仕事のためにいったカフェで二人の兄弟にであう。何回かあううちに仲良くなり、一緒に遊ぶことに。次は何で遊ぼうかと考えながらカフェへ向かうと、その兄弟が事故でなくなったことをしる。
『T21』
香久山ゆみ
(『ノアの箱舟』)
嵐が来る。私は小さなハコの内に身を隠す。嵐が外の世界をすべて呑み込む。私はハコの中でただただ身を小さくする。脳裏に浮かぶのは、懐かしき思い出たち。そして、嵐が去り、私は再びハコから外へ出て行く――。
『ニキと過去の物語』
持田瀞
(『サンドリヨン』『灰かぶり姫』)
シンデレラが王子様と幸せになった後、その姉の一人ニキは家の掃除係となっていた。幸せになったシンデレラ、そして過去の自分が羨ましくて仕方のないニキ。そんなある日、栗カボチャで遊ぶ猫のルークを追いかけると、着いた先は過去だった。今、見えていなかった真実が見えてくる。
『このバンドには名前がない』
平大典
(『ブレーメンの音楽隊』)
深夜一時、僕の住むアパートの一室。僕には非がないのにも関わらず、四畳半の畳の上で、三人のバンド仲間を前に正座をしていた。ベース担当の鳥居くん、女性ボーカルの猫田さん、ドラム担当のロバートさん、全員が険しい顔をしている。
『デーモン笹ケ瀬の左眼の世界は』
もりまりこ
(『桃太郎』)
犬雉桃太がリストラされたその日。妻のキビからラインが入る。「すっごい高い桃がくいたい。桃買うてきて」って。そこから桃太は高い桃をくらったために犬山猿貴志君と桃田猿団治君と出逢うことになる。ほんとうは木地君もそこに加わるはずだったのだけれど。
『リサーチ』
佐々木順子
(『いなばのしろうさぎ』)
金塊詐欺のセールスマンとして働いている俺は、お客との契約中に社長が逮捕されたというニュースを耳にする。取り乱した客に偽の金塊で殴られ救急搬送された先で二人の刑事に事情聴取されることになった。傷む頭を押さえながら、まだ仕事は続く。
『キノッピオ』
もりまりこ
(『ピノキオ』)
じぇぺっとおじさんがこしらえてくれたキノッピオ。キノは、あの物語とはすこしちがって、人が嘘をつくのを見分けるのが上手だった。そういうときみんなの鼻は縮むことを。みんなすこしずつうそをつきながらいきてるってことキノッピオは知っていた。
『ウサギかカメか』
水乃森涼
(『うさぎとかめ』)
菜摘は冴えない高2。自分はウサギとカメのそれぞれの駄目な部分を持ち合わせていると考え悩んでいる。同じクラスの美紗樹はなんでもできる人気者で自分とは大違いだと思っていたが、美紗樹に同じような過去があったことを知る。少しだけ前向きになれた菜摘は、考え方が変わったようだ。