無垢な白い洋服を着ている女の子は動くアンティークドールだ。
不釣り合いで艶やかな手鞠を突いて感情なく唄を綴っている。
「いあっといっすおるおく~
おみっちふっそおど~
おえあも、いあっといっすおるおく~」
一瞬存在そのものが疑わしく幻なのかと考えるが、棒読みな声はしっかりとした子供で生き生きとした音を感じる。
でもそれもが不釣り合いで、やはりこの世のものではないかと拭いきれないんだ。
「いあっといっすおるおく~
おみっちふっそおど~
おえあも、いあっといっすおるおく~」
その手鞠唄も意味不明だ。何語すらかも分からない。
でも迷いなく唄うのは、きっと意味があるのだろう。でも女の子が唄う場所は平々凡々な平屋の前で意味があるとは思えない。
住む家にしては凡庸過ぎて、その子が着ている服に不釣り合いなんだ。
ぱっと唐突に突いていた手鞠を受け止めると女の子は走って行ってしまった。
これで不意に消えてくれたこの世のものではないと確信したんだろうに。
変哲もなく行ってしまった女の子。その後に何か変わった事があるとすれば。
翌日にその平屋の前に救急車などが停まった騒ぎを見て、誰かが死んだと分かった事くらいだ。
実はこの子を見たのはこれが二度目。
その姿は初めて見た時は真っ昼間で幽霊を見たと信じたほど。それほど彼女の容姿は浮いている。
丁度その頃の自分は卒業論文をどうしようかと悩み幽魂をテーマに為ようかと考えていた。
目立つという魂胆はあからさま。