小説

『手鞠歌』洗い熊Q(『キジも鳴かずば』(長野県長野県))

 ――それで気が付いたのだ。

 僕は動画に納めた鞠歌を編集ソフトを使って逆再生してみた。
 不自然な鞠の上下の中、粛々とした様相で女の子は語っている。

「ころしたい。おまえを、どうしても。ころしたい」

 後日、今まであった事件を追ってみた。
 最初のマンションの飛び降りも、次の民家でも。無論、病院であった事もだ。
 実は全部、殺人だった。
 言霊でも予言でもなく、女の子はただ心の声を聞いただけ。
 それが何故、彼女には逆に聞こえたのか。余りにも強い殺意は、あの幼い子には理解できなかったからなのか。
 今だに分からない事だらけだが。
 ただ、あの鞠唄を目前に歌われば僕は真っ青になり、疑いと戦く目で周囲を見渡してしまうだろう。
 本当にソレが真実の声だったならばだ。

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