『王子がステキと限らない』
檀上翔
(『シンデレラ』)
シンデレラは皇太子と結婚したくない。皇太子が愚鈍と有名だからだ。結婚を避けるべく画策するが、皇太子の弟の第二王子からシンデレラが皇太子と画策して国家転覆をしようとしているとの疑いをかけられる。大臣たちの活躍により疑いは晴らされ、一件落着。
『芋虫の結末』
和織
(『LA CHRYSALIDE ET LE PAPILLON』ジョルジュ・メリエス)【「20」にまつわる物語】
石川豊野は放課後、いつも一人教室にいる。彼女が僕に見せたのは、古い映画。芋虫が蝶になり美女になり、その美女にフラれ、芋虫になる男の話。蝶が好きな石川は、自分は蝶の生まれ変わりかもしれないという。そんな彼女がある日、昔僕が付き合っていた人の名を口にする。それは、もうこの世にはいない有名女優の名前。
『まんじゅう二十個食べる、めっちゃ怖い』
ノリ・ケンゾウ
【「20」にまつわる物語】(『饅頭こわい』)
目が覚めたら、密室だった。部屋の中には五人。しかもこの中の誰か一人はこれから死ぬのだという。田邊がそう言った。密室を抜け出すには、この五人でまんじゅう二十個をすべて平らげなければならないそうだ。その中に一つ入った呪いのまんじゅうを引いたものが死ぬらしい。なんだそれ、めっちゃ怖い。
『カウント・オン』
木江恭&結城紫雄
【「20」にまつわる物語】
3倍の速度で拍動する心臓を持つ、F型指定難病「SCAT」患者たち。哺乳類の生涯鼓動数はおよそ不変であることから、彼らの寿命は非患者の1/3程度だと考えられている。SCAT患者の京太郎は放浪の末、五輪区画整理後の新宿で少女・イツカと出会う。
『成人式なんて思いやりのないものを毎年テレビで放映しないでほしい』
岸辺ラクロ
【「20」にまつわる物語】
五月の大学を歩いている時に目にしたふとした出来事で、僕は中学生のころを思い出す。あの頃僕は不登校で、にも関わらず5年後の成人式に一縷の希望をもって出席したのだった。
『素晴らしい朝』
義若ユウスケ
(『未来のイヴ』)
ある夜、大阪のバーで、飲んだくれの青年が変わった名前を持つ女と出会う。青年は女を家に連れ帰り、女の身体を自分好みのバイクに改造する。翌朝、青年はバイクに乗って走りだす……
『カタリベマッチ』
もりまりこ
(『マッチ売りの少女』)【「20」にまつわる物語】
じぶんの笑い声で目覚めたその日。わたしはほとんどの記憶を失くしていたらしい。ただ唯一覚えているのは去年の大晦日の火曜日銀座商店街での派手な男女の喧嘩だけだった。そして男があやつっていたジッポライター。あの炎に近づけば、わたしは飛んでしまった記憶の欠片がみつかりそうな気がしていた。
『じゅーじゅ』
末永政和
【「20」にまつわる物語】
何度教えてあげても、彼女は「十九」の次が言えない。「九」の次は「十」だから、「十九」の次は「十十」なのだ。彼女にとっては「二十」という言葉のほうが、よっぽど不自然に感じるらしい。
『さよなら、はじめまして』
柿沼雅美
【「20」にまつわる物語】
はじめて木塚さんに会ったのは、20年前、私が14歳になろうとしている頃だった。学校の延長のように塾に通っていて、別の学校の子たちが集まる塾は、学校があまり好きではない私には楽しい場所だった。
『名前って、ふたつ以上の鐘の音』
入江巽
(『ラムネ氏のこと』坂口安吾『赤と黒』スタンダール)
フランス人の父と、日本人の母の子、田中ジュリアンは、ある事情があって、自分の本当の戸籍名を隠して生きている。生まれたときから否応なしに与えられる、名前というものに翻弄されたこの男、すこしすねたまま、大きくなってしまった。
『僕の恩返し』
大森孝彦
(『鶴の恩返し』『浦島太郎』『わらしべ長者』)
父の秘書。不思議な女性で、何代も前から仕えている鶴子という女性。その正体は、鶴の化身であり、正体を見てしまったため、姿を消してしまう。昔話は事実であったのかと驚くとともに、彼女にあやまりたい少年は、浦島太郎の昔話を利用し、鶴へと変じ、彼女を追いかけたのでした。
*それぞれの小説はフィクションであり登場する人物、団体等名称は実在のものとは関係ありません。
*また、それぞれの小説内のいかなる主義・主張もブックショートとは無関係です。