小説

『舌を切る』本間海鳴(『舌切り雀』)

机に両肘をついて、手のひらに顎を乗せて、私は微笑んだ。私は分かっている。美玲は、こんな私のことをちょっと面白いと思っている。だから、私と関わることを辞められない。
「幼馴染だから仕方ないなって思ってるだけ」
美玲はぶっきらぼうにそう言って、店員が運んできたチョコバナナパフェを崩し始めた。私は、美玲を見つめながら考えた。美玲は可愛い。だから、そんな美玲に限って、彼氏いない歴イコール年齢ってことは無いと思う。
私は、店員呼び出しボタンを押した。
「私も食べたくなっちゃった、パフェ」
美玲はちらっと私を一瞥して、ちょっと笑ってため息をついた。
美玲は、上手く私に隠してるんだろう。どんな人なんだろう、美玲の彼氏って。
きっと教えてくれないんだろうな。だって、私はクソだから。

……とか思ってたのに、案外早く美玲の彼氏を知ることになった。
「最悪」と、私の顔を見るなり美玲は吐き捨てた。暇だしちょっと遠くのゲーセンにでも行こうと思って乗り込んだ電車に、たまたま美玲が乗っていた。そして、美玲はその細くて綺麗な指を、隣の男の手に絡ませていた。
「何? 知り合い?」
男は、愛おしくてしょうがないといったような仕草で美玲の顔を覗き込んだ。男は、長いサラサラの黒髪を耳にかけ、ギターを背負っていた。そして、耳には数え切れないくらいの、ピアスが開いていた。

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