小説

『27の香水』Rin(『とおりゃんせ』(福岡))

彼はなぜか告白を全て断っており、一部女子の矛先は私へと向かった。
しかし友達の姿勢を貫く私に、その関心も徐々に無くなっていった。
「どうしても私じゃダメ?」
「本当にごめんなさい」
卒業式の日、下駄箱に現れない彼を迎えに教室へと向かうと、告白を断る彼の姿。
「最後の最後まで、モテるね」
相手が教室を飛び出しため息を吐く彼へと声をかける。
「ありがたいんだけどね」
「じゃあ断らなきゃいいのに」
思ってないのに口が勝手に喋り出す。
「俺、好きな人いるし」
その言葉に心臓がキュッと掴まれた感覚になり、捲し立てるように話を終わらせる。
「あ、ああ〜そうなんだ!今から言いに行くの?お邪魔したね!じゃあ!」
「あ、おい!ひかり!」
彼の呼ぶ声も振り切り、見慣れた通学路を走って帰る。
彼の告白を断る人はいないだろう。
汗と涙が入り混じる高校3年の3月、私はあれ以来、彼との連絡を絶った。

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