小説

『27の香水』Rin(『とおりゃんせ』(福岡))

「良さげなのあった?」
コスメカウンターを3周したところで、エレベーター付近の踊り場で眉間に皺を寄せる。
「いいなと思ったのはある。だけど27の私がつけるには大人っぽすぎるかなって思った」
「ふーん、カウンターのお姉さんにもっかい相談してみたら?」
「うーん、そうね!そうする!ついてきてくれる?」
「ひかりが自分で買うならついてこないけど笑」
「ついてきてください笑」
けらけらと笑う彼の腕を引っ張り、コスメカウンターへと再び繰り出す。
「この香水大人っぽすぎますかね?今日27になったんですけど」
「あら!おめでとうございます!全然そんなことないですよ!シトラスからバニラでへと変化するこちらは、爽やかさと気品の高さどちらも兼ね備えており、これからますます大人の魅力が溢れるお客様にぴったりだと、自信を思ってお勧めできます!」
「じゃあ、これにしようかな!この香水に見合うような女性にこれからなっていきます!」
「ありがとうございます!お客様の魅力を最大限に引き立たせてくれると思います!」
「俺はひかりが大人になってくのは少し寂しいけどな〜」
「ちょっと、どういうことよ!」
「お客様がモテちゃうから困るのではないでしょか?」
「あ、そういうこと?笑」
「違うから笑」
照れるかれをお姉さんと一緒に茶化す。
「じゃあ会計は俺がするから、あっちで待ってて」
「は〜い」
「あ、すいません、メッセージカードとかありますか?」
「ございますよ。まとめてお包みさせて頂きますね」
「ありがとうございます」
会計後、担当のBAさんはこれでもかというくらいの笑顔で私たちを見送った。

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