小説

『蜜柑伯父さん』吉岡幸一(『こぶとりじいさん』)

 伯父さんの死を世界中の人が残念がりました。どうにか伯父さんと同じ蜜柑を栽培しようとして、世界中の科学者が研究しましたが成功することはありませんでした。
 誰もが諦めかけたいたころです。
 伯父さんの想いが亡くなった後も消えなかったのでしょうか。
 ある晴れた日の午後でした。
 頬がむずむずすると思ったら、突然、蜜柑がぽんっと両頬に生ったのです。伯父さんと同じ見事な蜜柑でした。私だけでなく家族の皆もです。それだけでなく国中の、いえ世界中の大勢の人の頬に一斉に蜜柑が生ったのです。
 どうやら伯父さんの蜜柑を一口でも食べたことのある人皆の頬に、蜜柑が生っているようでした。
 テレビのニュースをつけると頬に蜜柑の生った世界中の人々の姿が映し出されていました。慌てて外に出れば、歩いている人々の頬にも蜜柑が生っていました。皆、蜜柑が生った人は目を白黒させながらも、面白そうに笑っていました。
 ぽん、ぽん、ぽ、ぽん……
 と、蜜柑が人々の頬に出来ていきます。頬に蜜柑が生った人々が世界中に溢れていったのでした。

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