ママはリビングを出ようとしたとき、僕に気づいた。僕は、うつむき、涙が出てしまった。モモが僕をあのつぶらな瞳で見ている。
「あ、ごめん。拓斗、どうするパズル」
パズルの地球まで、洗濯機の中で、どんぶらこ、どんぶらこされていたのか。
「もういいよ。地球無しで仕上げるよ」
僕は、泣きそうに言った。
「ちょっと、パパ。どうしてくれるのよ」
「同じの買ってくるか?」
1000ピースある中のたった一つのピースのためだけに、新しい物を買うのはおかしい。僕はこれが欲しいんじゃない。家族の平和が欲しいんだ。モモが僕を見つめている。何かを促しているようにも見える。モモの瞳の奥を見ていたら、なんだか悔しくてたまらなくなった。机を見やると、団子の黄な粉が机に散らばっていた。
「ねえ、どうして、パパとママはいつもそうやって、揉め事ばかりしてるの? どうして、ママはいつもパパを責めるの? パパはどうしてママを責めるの? どっちが悪いの? パパが汗臭いのも、仕事一生懸命頑張ってるから、汗が出るんだし、ママだって、綺麗になりたいから、化粧して美しくなろうとしてるんじゃないの? そういう話聞いてるのしんどいよ。僕はパパとママの揉め事に揺られて生まれた、もめ太郎だ!」
僕は家を飛び出した。できるなら、この揉め事を宇宙の空に放り込み、バラバラにしたいと思った。
「もめ太郎?」
「ちょ、ちょっと、待って拓斗」
「行くぞ」
「うん」