ひゃっと短い悲鳴が上がった瞬間、僕は素早く立ち上がる。
どんなに動きが速いヤツも、僕の手にかかれば一発だ。隙をついて身動きをとれなくする。
「ここはお前の来るところじゃない。もう来るなよ」
そう告げて外へ放り出すと、毎度のことながら賞賛と感謝が降り注ぐ。
「ありがとう。助かった……」
「頼りになるわ」
軽い会釈でそれらに応えると、途中になっていた仕事に取りかかった。
「しかし、浦ちゃんは偉いよ」
隣に座る相川さんが大きな伸びをして言う。
「どんな虫でも殺さず逃がしてやるのねぇ」
「無駄な殺生は避けたいんで」
僕の返答には反応せず「これ、付箋貼ってるとこスキャンしといてくれる?」とついていないページの方が少なく思えるくらい付箋だらけの画集を渡してきた。
相川さんが僕に仕事を振る時は決まって疑問形で問いかけるが、そこにはいつも断る余地などなく、どんなに急でも、どんなに難しい内容でも、僕は引き受けるしかないのだった。