小説

『もめ太郎 1/1000ピース』山本世衣子(『桃太郎』)

「陽~、そろそろ夕飯よ」
 陽君のお母さんが陽君を迎えに来た。
「拓斗君、こんにちは」
「こんにちは」
「これ、パパがね、京都に出張行ってきて、お団子、買ってきたの。良かったら、おうち持って行って」
「ありがとうございます」
 僕は、陽君が西日を浴びて帰るのを見届けた後、お土産を見つめた。家族やご近所の家族を思い、お土産を買ってくる陽君のパパを恰好良いと思った。

 もめ太郎はこの世で僕だけなのだろうか? 陽君はもめ太郎ではなさそうだ。

 家に帰り、夕食を食べた後、陽君のパパのお土産を開け、家族で食べた。黄な粉がふんだんに使われていて、優しい甘さの団子だった。
「美味しいね~」
 と、ママはお茶をすすると、パパがお土産の箱を見て言った。
「京都なんて、高校の修学旅行以来だな」
「エリートは、日本中をビジネスして歩き回るのね」
「悪かったなエリートじゃなくて」
 モモがつぶらな瞳で僕を見ている。僕は、パズルの地球の破片を探すことにした。地球の青さは、他の星に比べて見つけやすいはずだが、なかなか見つからない。
「ちょっと、ちょっと」
ママが慌てている。
「どうしたんだよ」
「あなた、ポケットに拓斗のパズル入れたでしょ。ぐちゃぐちゃよ」
「なんで、俺が拓斗のパズルをポケットに入れるんだよ」
「なんでもポケットに入れるクセあるでしょ」
「そんなクセ、ないよ。洗濯する前にポケットの中身くらい調べろよ」
「なんで私が全部そう言う面倒を全部見ないといけないのよ」
「それがママの仕事だろうが」
「最近私だって、仕事始めたんだから、少しは家のことも手伝ってよ」
「パートは自分がやりたくてやってんだろ?」
「この~」

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