小説

『もめ太郎 1/1000ピース』山本世衣子(『桃太郎』)

 カレーの匂いがしてきた。夕食はカレーだった。
「拓斗~、今日はパパのカレーよ」
「俺だってやろうと思えば料理くらい作れるんだって」
 パパは自信たっぷりに言った。
「カレーなんて誰でも作れるわよ」
「ちょっとくらい褒めてくれよ」
「何言ってんのよ。私なんか、料理で一つも褒められたことないじゃない」
「いただきます」
 僕は、小声で言った後、カレーを食べた。簡単に作れるはずのカレーがなぜだか不味い。
「そうね、いただきましょう」
「そうだな。いただきま~す」
 僕は黙ってパパとママの会話を聞いていた。
「うん、うまいべ」
「うん。カレー粉の味」
「まったく、可愛くないね~ママは」
 パパもママも美味しいと言うのに、僕には味が分からなかった。

 今日は日曜日で良く晴れた。朝起きて、リビングで朝食を済ませた後、途中のパズルを見て、最後の地球のピースを探そうとしたが、その気になれず、公園に遊びに行った。日曜は大体、陽君がいる。

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