目覚めた徳八は、眠たい目をこすりながら、布団から抜け出す。
「あ、あれ? 朝か。 昨日、あれから寝てもうたんか。あれ? りきがいてない。りきは?」
徳八の呼び声に、奥の部屋から元気に出てくるりき。
「ワンワン!」
「お前、そこにおったんか?」
「ワン!」
「おい、りき?」
「ワンワン!」
「おい、りき? 流暢な関西弁は?」
「ワンワン!」
「『せやおまへんか〜』は?」
「ワンワン!」
「『おくんなはれ〜』は?」
「ワンワン!」
「りき、お前……。もしかして……。喋られへんのか? え? 昨日は? 昨日のは夢……? 夢……、夢やったんか? りき?」
「ワンワン!」
すると金物屋の扉を、ドンドンドンドン、と激しく叩く音。扉を開けると、そこには目つきの鋭い役人が仁王立ちしている。
「徳八! 迎えに参ったぞ! 犬と共に出て参れ!」
「ついにきたか……。りき、そろそろ行かなあかん」
「ワンワン!」
「行こうか、りき……」
徳八が俯いて、りきを見た。
その光景を見て、彼は目を見開いたのだ。
なぜなら、りきは軽快なフットワークで、ファイティングポーズをとっていた。
「りき!? お前!?」
× × ×