カンダタはすぐに閻魔大王に呼び出されました。
「カンダタよ。釈迦如来の干渉により加えられた刑罰と、そのことによる釈迦如来の告発に対して新たな判決を申し渡す」
カンダタは頭を下げたまま、その先の言葉を待ちました。
「生前に犯した罪を全て償ったものとする。これ以後は輪廻転生までの間、地獄で自由に振舞ってよい。暇なら鬼の手伝いでもしてやってくれ」
閻魔大王は嫌いな釈迦如来をやりこめる事態を作ったカンダタに対して、最大限の好意を示して報いました。
「カンダタよ、よくやった」
閻魔大王は破顔してそう言うと、真顔に戻って聞きました。
「お前、本当に人間なのか」
カンダタは表情を変えず、何も答えませんでした。
「まあいい。オレは願ってもない結果を得た。お前には報いねばならん」
閻魔大王はそう言うとカンダタから地獄の罪人の印を外し、もう一度笑った。
「どうして私が告発されねばならんのだ。私は仏の慈悲を示しただけではないか」
釈迦如来は不安げにうろうろ歩きながら、弥勒菩薩にぼやいていました。
「現世にお慈悲を示したのならば問題無かったのでしょうが、地獄の罪人が相手となると閻魔大王の申し立てももっともかと」
弥勒菩薩は目障りな釈迦如来に取って代わる機会がこれほど早く来るとは思っていなかったので、こみ上げてくる笑いを押さえつけ、いかにも同情している表情を顔に貼り付けて言いました。