小説

『桜前線停滞中』原カナタ(『桜の樹の下には』)

 私の見立てではおじいちゃんは射殺した警察官だと推測しているのだけれど、真実は分からない。おじいちゃんが、この家を買った理由も分からない。
 それこそ、この物語の全てを語ることが出来るのは桜前線の少女しかいないのだ。
 いや――違うか。
 本当にこの桜が物語の桜ならば、桜の下に眠る男もいる。
 出来ることなら、男から物語も聞いてみたいものだと思いながら、私は今日も桜の涙を浴びるのだ。

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