小説

『水鏡』藤田竹彦(『死神の名付け親』)

 きっと、彼の右手は死を目前にして彼が求めた希望と最後はこうありたいと願っていた夢に蓋をされることを拒み、ほんの少しだけ与えられはずの幸福を求める叫びのサインだったのだろうか?
 いみじくも、彼の幸福を排除し絶望へと導いたのが彼の愛した恋女房だったという結末にほくそえんでいるのは、死神ただ一人だけだった。

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