3人はもくもくと歩く。アフガン君は元犬だけあってちょっと、ターボがかかってるんかっていうぐら足早い。
なんかうれしくないっすか。鬼に会えるって。だれかがどこかで待ってるってちょっといいかも。アフガン君は息もきらさず、さわやかに話す。
場所は運河沿いの倉庫だという。しかしかなりちかづいているはずなのに、ちかづけないのだ。笑う。笑い転げる。誰も俺たちがチーム桃太郎とは思わないってところ、小気味いいっすよね。アフガン君のりのり。辿り着きたいのに辿り着けない場所。もしかしたらずっとそこに行きたかったはずなのに、たどり着けないことでまるで存在していなかったかのように、
まぼろしの域になる。ナビは確かに合っている。ぼくら3人はそれでもリストラー達だから、この現状以上に文句をいいたいこともなくひたすら歩く。
倉庫で彼が待っているらしい。情報はひとつだけ。
左眼だけになったたぶん鬼が島の鬼らしいのだ。彼が待っている。その右眼はいつかの戦いでなくしてしまっていまは左の眼だけが頼りらしい。
ふと俺は春日局を抱えて帰ることを約束したことを今すぐ反故にしたくってたまらない。生まれてくる子供が楽しみなのかもほんとうのところわからない。キビの最後の電話の声は、吐きそうだった。つわりでくるしんでるのに早く帰ろうとしない俺は鬼だなって思って足取りがすこしみんなとずれてはぐれる。
しんどいっすか? 休みますか? こんなに優しい彼らの声を聞いていたら俺帰りたくないかも。こいつらといっしょに鬼にあいにゆきたいかもって気持ちがむくむくわきあがってきて、キビのことは忘れる。きらいじゃないけど、いまは忘れたかった。つかまりますかねぇ、ぼくたちとかで。猿団治君がつぶやく。話し合いっていうのもありっすよねとアフガン君。桃太郎が鬼と話し合う。なかなか愉快やん。らぶあんどぴーす!
もうすぐ目の前に運河が見えてるのに倉庫はみあたらなかった。そのとき、はぐれた一羽のカラスが鳴きながら帰るところだった。
木地君にぃ、めっさ会いたかったかな。猿団治君がぽつりという。ぼくね、こっそり猿団治君のブログ読んだことあるんですよぉ。
え? 木地君がブログ? ってアフガン君。知らんかったって俺がいうと、そうなんですよ。ぼくも偶然みつけてぇ。じぶんのスマホにお気に入りにしてあるらしく、それをみせてくれた。
<いつもなにかに追いついていないような気がしきりにしてしまう。その追いついていこうとしている背中を見送っては、また明日を迎えてる。残された荷物のことをちらっとよぎらせながら眠りにつく。いつもどこかでなにかを積み残しながら>