小説

『めんこい』多田正太郎(『雪太郎』)

うーん、まぁ考え方だろなぁ。
考え方?
ああ。
どういう考え方だよ?
雪太郎と過ごした楽しい冬、何年もだぞ。
まぁ、冬季限定だけど・・。
全然無縁の、老夫婦だって沢山いるんだぜ。
確かに。
だろ。

で、その年の・・。
おや? 続きがあるんだ?
ああ。

その年の雪は、長者屋敷を。
すっぽり覆い隠すほどに。
降り積もりました、とさ。

これは、海の底でなかったよなぁ。
ああ。
そうかぁ、この星、壊す前の、昔話だもなぁ。
ああ、壊す前のだ・・、人間がさ。

廃墟の店舗で。
日本のメーカーが開発した。
二匹の自己修復進化型の癒しロボット犬。
それが昔話、雪太郎を・・。
かって、店の看板犬たち。
ワンワン。

海に雪が積もったように。
サンゴの白色化の死滅に始まり、
母なる海が死んで・・。
四季なんか、あっという間に。
この星から・・。

四季限定。
もうそんな言葉。
概念すら・・遠い遠い昔に・・。

何で?
四季限定。
そんなことを、感じる人間。
その姿がさ。
この星、地球から消えて、どれくらい?
もう思い出すことも、数えることもさ。
出来ないくらいのさ。
そんな年月がだよ。
過ぎているからさぁ。

ワンワン。

廃墟の店舗で。
いや、かって店舗と呼ばれていた。
そんな建物らしきかなぁ。

二匹の自己修復進化型。
そんな癒し系のロボット犬。
それが昔話、雪太郎を・・。
今日も、囁き合う。

めんこい、実に、めんこい、顔して。

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