小説

『めんこい』多田正太郎(『雪太郎』)

そんな老夫婦は、とても寂しい日々でした

おいおい、それ決めつけでないの?
な、何だよ。
子供いないからって寂しいの? 必ずさぁ。
うっ・・、ちゃちゃ、入れるなら止めた!
御免御免、ふと、思ったもんだからさぁ。
ふと、思っても、口にするな!
ああ、分かった、続き頼むよ。

お正月の夜のことだった。
あたりは深い雪だ。
トントン、トントン。
戸口をたたく音がした。
なんと、吹雪の中に、男の子が・・。
雪太郎と名乗ったこの子。
めんこいこと、めんこいこと。

おっ! ここで、めんこい、これだな!
何だ! めんこい、これがどうかしたか?
方言だろ、めんこい、これってさぁ。
ああ、かわいい、そんな感じだべなぁ。
北の方だな。
ああ、なんたって雪太郎、これ雪だべさぁ。
はははは、そうだよなぁ。
兎に角、めんこいんだ。
そんなに、めんこい、のか? 
ああ。
老夫婦が見たってーの、吹雪の中の子供だろ。
ああ、そうだぜ。
ビックリするだろ、普通。
そうだろなぁ。

おーい!
長者の家によぉ!
男の子がやってきたぞぉーい!
あっという間に、この情報。
村中を駆け巡り。
村人がひっきりなしに集まって。
お祭り騒ぎだ。
ご馳走・・ご馳走、またご馳走・・。

そんなわけで老夫婦。
まるで夢のような楽しい日々が・・。

まぁ、当然、冬の終わりが。
春が近づくと、みるみる雪はとける。
そうしたある日、いないことに気付く。

いない? 誰がさ?
お、お前なぁ。
何さぁ?
状況とか、全然読めない奴だなぁ。
な、何が言いたいんだよ!
いなくなる、この話の流れでよ、分からんか。
分からん!
お前さぁ、昔話にしても童話にしてもよ。
何だよ?
お話しって、理解できないタイプ?
おやおや、理解できないタイプだと!
ああ。

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