小説

『ピンクの雫』柴垣いろ葉(『アリとキリギリス』『さくらさくら』)

 そして、ピンク色に染まった大きな桜の木を目にすると、みんなで歌いだしました。
「さくら、さくら」
 それは、キリギリスの歌でした。さくら さくら
 野山も里も
 みわたすかぎりかすみか雲か 朝日ににおう
 さくら さくら はなざかり
 子アリ達の歌声は、春風にのって、野原一面をやさしく包みました。
 いつしかその歌声は、人里にまで流れ着き、キリギリスの歌は、人間たちにも歌われるようになりましたとさ。
 さくら さくらやよいの空は

 
 みわたすかぎりかすみかくもか匂いぞ出ずる
 いざや いざや 見にゆかん

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