小説

『白雪姫的恋の見つけ方』小高さりな(『白雪姫』)

 白雪姫のように、純粋で穢れがない無垢な少女に戻れたらいいのにと思う。ぐちゃぐちゃに悩んで、急に気持ちが不安定で、訳もなくいらいらした数日後には生理が来る。二十七にもなって、自分の体ともうまく付き合えない、毎月の恒例行事。
 彼とのつながりも愛のささやきも、まだ始まりにすぎないのだと思うと、とても怖い。早く彼との関係がこのままずっと続いて、八十くらいのおじいちゃんとおばあちゃんになって、あの頃は若かったね、なんて笑い合えるような、絶対的な家族の思い出を懐かしむような間柄にひとっとびでなってしまいたい。
 先がとてつもなく長い。彼とそんな風になるまで、どれほど時間がかかるだろう。経過などいい。ただ確かな形が欲しい。
 白雪姫はキスをして目が覚めて、めでたし、めでたし。その後はどうなるの? 本当に幸せになれたのか誰も教えてくれない。
 彼はすやすやと安らかに眠っている。頬を触っても起きない。里香は彼の体に寄り添って体温を感じながら、落ち着きを取り戻す。冷えた里香の足先が彼から温もりを分けてもらい、徐々に同じ体温になり、境目がなくなっていく。
 めでたし、めでたし、かすれたわたしの声がベットサイドの灯りを消した。
 すべての女に幸あれ、きっとプリンセスになることを一度は夢見た女たちへ。本当は白雪姫が大好きなわたしへ、幸あれと。
 朝、彼に起こされるまで、もう少し夢を見ている。

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