小説

『オトリとサクラ』はづき(『ヘンゼルとグレーテル』)

〝別にあいつが俺とマジで心中したのはおかしくない。問題はお前だよ、サクラ〝
「ついてくんなよ」
 こんな事態になっても俺は冷たい。
「なんとか言えよ。人殺し」
 そう叫び、近くにあった木の枝を足元に向かって投げた。思いきりぶつけようとしたのに枝は軽く、自分のすぐそばに落ちそれが余計にイラついた。
 久々の会話がこれだ。終わってる。といっても一方的で、向こうは黙ったまま。
 示す物が何もない。ここがどこで、今が朝か夜なのかを。
 森は静かで俺の声がやたらと響く。マイナスイオンたっぷりの中こいつと2人は正直きつい。そんな思いであてもなく歩いた。

 発端はドライブだ。
「オトリ、行かないか?」
 その誘いには慣れていた。これで何回目だ?だからまたかと思う。
 父親は死にたがっている。それも俺を道連れに。けどいつだって一線を越えられず、ただのドライブで終わる。俺はいつでもいい。そう構え暇潰しに同乗してやってるだけ。今日もそんな感じだった。
 「なんだよお前」
 助手席に座り込もうとした時、後部座席にいたサクラに気付いた。横向きに座り足を伸ばし目を閉じていた。
「寝てんの?こいつ」そう言った瞬間目をキッと開け一点を見つめ黙っていた。
「なんなんだよ」
 それにこいつこんなんだったか?と思う程雰囲気が変わっていた。
 記憶のサクラは金髪に派手な化粧、服装だって露出度多目のものばかりだった。
 それが今日は真っ黒に伸びた髪、化粧もせず血色は悪く、膝下まである地味なワンピースを着ていた。2年前に家を出てからの再会。
 良く言っても冷戦状態。悪く言えば絶縁状態。お互いいないのと同じ。サクラはそんな存在の妹だ。
「今日はサクラも行きたいって」
「あぁそう」
 サクラがどうして急に現れたか?そんなことどうでもいい。興味がないんだ。お互いに。
 車内は無言。サクラもいるなら尚更今日もドライブで終わるだろうと思っていた。
「そうそう、この辺まだお前達が小さい頃良く来たな」

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