小説

『オトリとサクラ』はづき(『ヘンゼルとグレーテル』)

「勝手に人の部屋入んないでよ」後ろから声がし、回想は消えた。
「何やってんだよお前。この傷、気味悪い」
「放っといて。見ないでよ」
「そんな興奮すんなよ」
「サクラ?大きな声出して。びっくりしたよ」
 キョトンとした顔でカレヤが小走りで現れた。
「なぁ、もうここから出たいんだけど」
「どうして?お腹いっぱいにならないから?」
「あぁ。それにもう昔を見るのはうんざりだ」
「どうして?まだまだ見て欲しいのに。ねぇ?サクラ」
 サクラは俯きしばらく沈黙が続く。
「やっぱり気にしてるんだ。あのこと」
 カレヤが泣き真似みたいな仕草をして言った。
「あのこと?」
「ね?サクラ」
「なんの事だよ?お前ら知り合いだったのか?こんなイカれた爺さんと何企んでんだよ」
「うるさいな、元はといえばあんたが」
「俺が?」
「何でもない」
「はぁ?」
「いいから黙って」
「だから俺はお前の、そのキンキンした声が大っ嫌いなんだよ」
 カレヤが大声で笑いながら拍手した。
「お前からかってんのか?いい加減に」
「もういいよ。リトでしょ」
「は?リト?」
 リト。俺の名前からとって付けた。小さな体で俺を癒してくれた可愛いリト。
 いい歳になっても一向に変わらない俺にまたも両親が他人のアドバイスで、家に連れて来たのがリトだった。

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