小説

『オトリとサクラ』はづき(『ヘンゼルとグレーテル』)

「なんでこんなジジイがリトなんだよ?お前丈夫か?リトはハムスターだろ」
「あんたが付けた名前じゃ嫌で違う名前で呼んでたのカレヤって」
「はぁ?勝手に名前変えんなよ」
「それだけじゃないだろ?サクラ」
 カレヤがデカイ声で脅すように言ってきた。
「目、が」
「目?」
「そう。お前にやられたこれも、ずっとこのまま」
 眼帯を指差した途端戯けた顔してカレヤが言い立ち去った。
「訳わかんねーよ。もう」
 追求したくても、空腹がまた襲ってくる。
 リト?笑えない。1年足らずしか一緒にいれなかった。突然いなくなった可愛いリト。ケージから逃げたって言われたんだ。
 あんな爺さんなわけない。
 俺は自分の部屋に向かい適当に床を食った。
 回想に出てきたのは、ぐちゃぐちゃになった俺の宝物。認めたくないが、成長と共に他人は俺を虐めてた。
 これがその証拠。踏みつけられた宝物は、元がなんだったのかも分からない程変形している。けどはっきり覚えている。これはデジタル時計だ。
 電子工作が好きな俺が初めて作ったんだ。
 嬉しくて、馬鹿な俺は学校に持ってった。それが仇となりこんな姿にさせてしまった。
 大きくため息をつき座り込むと、ドアがいきなり開きサクラが入って来た。
 今のサクラじゃない。これは回想のサクラ。
 何勝手に入ってんだよ。怪訝な顔で俺は見た。
 サクラは壊れた時計を見つめ、そっと触れてた。何を思っているんだこいつ?
 その顔は、同情と悔しさが混ざったような、複雑な顔に見えた。
「これ、食ってみろよ」
 カレヤはいつだって気付いたらいる。
 渡してきたのは壁の切れ端。
 柄が微かに付いている。これは玄関の壁紙だ。

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