「バカバカしい」
サクラを置いてまた自分の部屋に戻る。
「あー腹減った」
床を千切り、口に入れると舌が驚いた。初めての味だ。美味しくもないが不味くもない。
「こんな部分があったのか」それも俺の部屋に。
回想に現れたのは通学バック。ボロボロだ。その上馬鹿だのゴミだの死ねだのご丁寧に油性マジックで書いてある。
「くそっ。なんでこんな物」
目を背けようとすると人の気配がした。またお前かよサクラ。
回想のサクラは雑巾を持って入ってきた。なんの用だよ?
するとサクラはバックの汚れを拭きだした。泣きながら必死で、必死で拭いてくれている。
は?お前、何やってんだよ。
そんな擦ったって簡単には消えないんだよ。
馬鹿だなお前。そんなに泣くなよ。
悔しいのか?情けないか?こんなんが兄貴で。
回想のサクラの頭の上に手を合わせた。
「いいんだよ。そんなことしなくたって」
壊れたデジタル時計に触れてくれたサクラ。
バックを必死で綺麗にしようしてくれるサクラ。
たったこれだけの事。それだけの事。
それが嬉しかった。
俺は立ち上がり玄関に向かった。
「行くぞ、サクラ」壁に凭れ座っていたサクラの手を引き玄関扉に手をやった。
「くそ、なんで開かないんだよ」どんなに強く押してもドアが開かない。
「手なんて繋いだの初めてかも」
「あ?あぁそうだな」言われてとっさに手を離した。
「サクラ」
「何?」
「何だったんだろうな俺達」
「さぁ」
「さぁって」
「今更仲良しごっこ?」気付けば奴がすぐ後ろで笑ってる。