腹には我が子の命が。
込みあがるものは、温かい感情だった。猫はゆっくりゆっくりと歩き出す。
「あの方は当然のことをしているだけさ。つまり、芽を育て、間引きをし、水をやって肥料をやる。花柄を摘み、枯れた葉を取り除いてやるのさ。それがたとえ命の花であっても、花に変わりはないだろう? 少々、世話に対するセンスは悪いがね。神だ、死神だといわれる所以はあっても自覚はないだろうさ。
だれが彼を慈悲深いと言ったんだい? ああ、花にかける愛情は果てしないさ」
神を疑ってはならない、老婆はもう一度言った。
神の愛を疑ってはならないのだ。
たとえそれが求める種類の愛とは違っても。
そしてそれは、そこかしこに散らばっている。
死神は花を引き抜く。
しかしながら、命の花を育て咲かせるのもまた死神ではなかったか。
猫はいとおしさと切なさと、そしてこれから生まれてくるわが子のために、今一度空に向かってにゃあと鳴いた。