胸を押さえながら必死に自分に言い聞かせる。
…病院に行くほどではないんだ。
…ただ、自律神経がおかしいだけ…気の持ちようなんだ…。
…大丈夫、まだ大丈夫だから…。
ハンドルに頭を預けて、何度も自分に言い聞かせる。
そうして、ようやく呼吸が落ち着いてくると、私は上を向いてため息をついた。
そう、もう自分はこの図書館とは縁はないのだ。
正職員である“元”同僚の姿なんかに、怯える必要はないのだ。
…だって、自分はここをやめさせられたのだから…。
そして空虚な気持ちに包まれながら、私は拭いきれない喪失感の中へと沈んでいった…。
…臨時職員とはいえ、長年の夢だった図書館の司書として雇われた私が半年もしないうちにその職場をやめさせられたのは、ちょうど一年前のことだった。
『もう、来月からは正規の職員しか入れないという話でね。最初の規定では、君にもう一年ほど仕事をしてもらうつもりだったのだけど…すまないね。』
頭を下げる館長の言葉は、非常に悲しいものだった。
しかも、その話が来たのは月が変わる一週間前のこと。
市の方針で新たに改装することとなった新図書館の人員縮小に伴い、あぶれた人間の行きどころに困った市の人事課が年度の代わるどさくさにまぎれ分館に古参の職員を置く事にした。そのためには必然的に分館にいる職員を一人追い出さざるを得なくなり、そのわりを食ったのが私であった。
…短期のバイトを点々としながら、ようやく得た希望の職。