小説

『砂塵のまどろみ』化野生姜(『眠い町』『砂男』)

だからこそ、それらのものを仕分けするのも私の仕事であった。
新聞をはじめ、チラシ類や、電気代、ガス代の請求書とさばいていく。
そうして仕分けをしていく中で、ふと見つけた一通の封書に私は心臓をつかまれたような気持ちになった。

…それは、県外の図書館からの、私宛に来た封書。
封筒のサイズは大きめのA4だ。
私はその封筒を胸に抱えると、急いで自室へと向かった。
誰もいない部屋で周囲を見渡し、封筒を裏返し、セロテープを剥がす。
焦っているためか、ストーブのせいか、自分の汗でセロテープを剥がすことに苦労し、いったんベッドの近くにある窓を開け、外の空気を入れかえながら、再び作業にもどる。

…そうして苦心して出て来たものは、以前私が送った履歴書と、一枚の短い文の書かれた紙だけであった。

『…採用面接にご来館いただき、誠にありがとうございました…選考に際して慎重に検討させていただきましたが、残念ながら今回は貴意に沿うことができませんでした。何卒ご了承くださいますよう…』

文を見て、力が抜けて行く。
血が、顔から引いていくように感じられる。
一通の不採用通知。返却された履歴書。
見飽きた文字、同じ文。

「また、だめだった…。」

思わず、言葉が口をついた。

何度送ったかわからない。何度受けたのかわからない。
一年前からの、時間をぬっての必死の就職活動。
職業安定所に時間をつぎ込み、病院にも行かず、必要があれば他県に行くためにわずかな貯金をもつぎこむ。就職するために金を稼ぐのか、稼ぐために就職をするのか、それもわからなくなってきた頃に来た手紙…それが、これだった。

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