小説

『砂塵のまどろみ』化野生姜(『眠い町』『砂男』)

しかし歩いたとたんに足がくずおれ、無様に身体が地面に投げ出される。
見れば、足の部分はすでに砂礫と化し、他の砂にまじって見えなくなっている。
気づけば、腕もなくなっており、耳の内側ではざらざらという音だけがこだましていた。

私はせめてあの町だけは見ていたいと思い、必死にあごの向きを変えて目の前に浮かぶ町を見つめた。

…なぜ、今まで未明の「眠い町」が気になっていたのか。
それが今、わかった気がした。

そう、自分は知りたかったのだ。
砂漠の砂がどこから来たのか。
どうやってできたのか。

それが今、わかった気がした。

なるほど。砂をまけば、疲労も錆びもするのも最もだ。
その砂が何でできていればいいのか、それを考えればよかったのだから。

「そっかぁ…私、疲れてたんだ。」

そうつぶやいたとたん、唇がざらりと崩れる。

後ろにある砂漠。
そこは、数えきれない人たちの疲労からできていた。
母が私たちの生活を「普通」といった意味が良く分かった。
砂は、あらゆるところから大量に運ばれていた。
町からも、都市からも、世界中のどこからも…。

そう、ここは疲労の吹きだまり。

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