テーブルの上に立っているという、マナー違反はさておいて……猫の癖にと言う者おらず。
さて、争う二人に目を向ける。
「「ふーんだ!」」
互いに背を向け、ツンと腕組み鼻息荒くし、これではどちらが動物なのやら……二人を仰ぎ、猫五郎、嘆息しては呆れ顔。仕方ない。二人は放って一足先に現場の確保。持ち場を離れてテーブル歩く。さてさて……一体なにを見ればいいやらだ。紅茶を避けてのキャットウォーク。散らかしも散らかしたテーブルの上は、足の踏み場もなければ証拠もない。
「ふむふむ、こいつは匂うにゃぁ~」
とまあ、それらしいことを言っておけばOKと、釣り針垂らして餌つけて、食らいついたは隣からずずいと伸び出た大きな手。
「ここは私の出番だな」
猫の手借りぬと言わんばかりに、八田狂介、足らない頭をフル回転。まんまと猫に乗せられて、一人と一匹牽制しては、イニシアチブを取り始める。お調子者のその姿、アリスはお菓子を頬張りながら、紅茶片手に眺めてた。猫は額をクシクシかいて、なんとも言えない表情と、猫なで声で大あくび。
「勝手にするといいにゃぁ~」
椅子にぴょこんと飛び乗って、ふわふわ尻尾をゆらゆらさせた。
さて“第一の被害者を、その目でしかとご覧ください”暢気な声も聞こえてきそうな茶会の席で、視線が集まるその先に、転がる死体は三月兎。大きな耳とボサボサ頭の茶色の毛。普段通りの装いで“
曰く宇佐美は、茶会の陽気に当てられて、走り回ってイスにつまずき、テーブルの上に頭を強打。ゴツンと大きな音鳴らし、熱い紅茶を頭にかぶってショック死したというわけなのだ。八田が指差す先にあるのは、ひっくり返ったティーポット。しかも紅茶は毒入りの。
「どうだねこの名推理!」
森に五月蝿く響く声……しかし二人は無言のままで、八田はむうと眉ひそめ、紅茶をあおってさっさと次へ。