小説

『おとぎサポート』広都悠里(『一寸法師』)

「どうしてそこで幼稚園が出てくるんです。念のために聞きますが堀川翼君、きみの夢はなんですか?」
「ウチデノコヅチで背を伸ばしてもらうことですかね」
「……小さい」
「どうせ小さいですよ」
「体が小さくても夢は大きく持っていていいんですよ」
「大きなお世話だ。おまえみたいに道標のごとく背の高い奴にオレの気持ちはわかんねえよ」
「ふざけていないで真面目に答えて下さい」
 どっと笑い声がおこる。え?笑い声?
 辺りを見回して驚いた。いつの間にかオレたちの周りに人だかりができていた。
「超ウケるー」
 誰かが手を叩く。見回すとだれもかれもが笑っていた。オレがひそかに想いを寄せている同じクラスの白井結花も白い歯を見せて笑っている。
「いつコンビを結成したの?」
 何なんだこれは。今までこんなにたくさんの人が集まってきたことなんかなかった。大きな拍手。笑い声。
 笑うみんなを見ているうちに恥ずかしさと一緒に、不思議な快感が立ちのぼってきた。
 これはチャンスかもしれない、誰にも言ったことのない、言う前からあきらめていたオレの夢がひょっとしたら叶うかもしれない、そう思った。

「じゃあ、オレがボケるから、おまえはツッコミな」
「ツッコミ?」
「ネタはオレが考えるから。お前は台本通りにやってくれればそれでいいから」
「ネタ?台本?」
「いちいち反応するな。さらっと聞き流せ」
「いや、だってもう全然意味がわからない」
「わからなくてもいいの。お客さんが笑えばそれでいいの」
「お客さん?」

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