小説

『おとぎサポート』広都悠里(『一寸法師』)

 コント「一寸法師」でグランプリを獲ったオレたちはテレビやラジオに出るようになった。
「これでめでたしめでたし……じゃないでしょう?」
「金と名誉と……あとは女か」
「そりゃ無理ですね」
「何でだよ?」
「堀川君より背の低い女の子は親指姫くらいです」
「ふつうに身長ありますけど?」
「えー?どこ?どこにいるのか見えないんですけど」
「もっと下」
「下?」
「下すぎるだろう。ありんこじゃないんだから。もっと上を向け。上すぎる。おまえより背が高いのは電柱ぐらいだ」
「どこから声が聞こえているんだろう」
「ちょっとだけ下を向け。この六尺男」
「六尺、って。百八十二センチですけどね。ちなみにこの身長は一寸法師が打ち出の小づちで大きくなった身長ですよ」
「ええ?マジで?」
「マジで。ちなみに、あなた、一寸法師さんの身長、一寸とは三センチのことです」
「だれが一寸法師や!三センチ以上あるわ。オレの親指だけで三センチあるわ」
「わームキになってる。ちょっとした冗談なのにムキになってる」
 
 今日もオレたちはたくさんのお客さんの前に立つ。
「さあ、名前も売れてきたし、そろそろ本気で次のことやりますか」
「次のこと?」
「僕の仕事はおとぎサポートです。漫才で売れたからってそれだけじゃおとぎ話になりません」
「まあ、そうかもね」
「完成めざしてもうひとがんばり。さあて、政界に出るかそれとも」
「政界?」

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