小説

『おとぎサポート』広都悠里(『一寸法師』)

「趣旨なんかどうでもいいだろ!」
「いや、それはよくない……」
「サポートするって言ったのは嘘かよ」
「嘘じゃありません。でも」
「いや、嘘でもいい。おとぎサポートとかそんなのどうでもいい。標君とならいける気がするんだ。だからお願い。お願いします」
 再び頭を下げる。膝をつく。オレの本気を受け取れ!
「標君。きみがオレのウチデノコヅチだ」
「は?」
 標のポーカーフェイスはさっきから崩れっぱなしだ。目を丸くしたりうろたえたり、頭を抱えたり、ああ、このリアクションもいいなあ。
 オレはほれぼれして口元が緩む。
「おまえが横にいてくれたら、オレは伸びていける。身長は多分このままだけど、でも夢に向かっていっしょに伸びていこう。あ、おまえはもう身長は伸ばさなくていいけどね」
「ちょっと待って」
「身長差もネタになるし、そのつめたーくさめきった落ち着いてる感じもオレと正反対でいい感じだし」
「全然わからない……」
「そう!そうやってぼそっとつぶやく感じが笑える。とりあえず文化祭でやってみよう」
「だから、僕は表舞台に立つ気はないって言っているじゃないですか」
「大丈夫、大丈夫。おまえ、舞台に立ってもオレの引き立て役にしかならないから」
「あーそうか。ってそういう問題じゃないんですけど!」
「そうそう、その感じ。いけるよ。ここで爆笑、どっかーん!」

 かくして漫才コンビ「おとぎサポート」は誕生した。
 コンビ名はいろいろ考えたけれど、どれもぴんとこなくて「変わってるし、なんとなく面白そうだし、覚えやすいから」と出会った時に標が言った言葉をそのまま採用してコンビ名として使うことになった。
 まさかそのあともずうっと使うことになるなんてその時は思いもしなかった。

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