小説

『おとぎサポート』広都悠里(『一寸法師』)

「いや、一寸法師は嘘でしょう」
「まあ、一寸ではなかったですけどね。話は盛った方が面白いので」
 どこからどう見ても大真面目、はきはきとよどみなく語る。
 ドッキリ大成功の手書き看板や「なんちゃって~。信じた?」というオチは全く見当たらず、オレは本気で困り、救いを求めるようにあたりを見回した。
 こんな時に限って、なぜ顔見知りの奴が誰も通らないんだ。戸倉のやつ、オレを見捨ててどこへ行ったんだよ。
「いくら強くても、頭が良くても、一人の力は小さいものです。でも協力者がいれば叶わない夢も叶うことがある。僕らは世のため人のため、明るい未来と希望のためにそれを全力でサポートします」
「ちょっと待って。言っている意味が分からないよ。標君、きみは高校生じゃないの?」
「便宜上は高校生です。調査の結果、夢の実現をサポートするにはこの世代が一番効率がいいことがわかりましたので」
「便宜上高校生?効率?」
 なんじゃそれ。こりゃあもう、完全なイカレ野郎じゃないか。何が一寸法師だ。ウチデノコヅチだ。みんな面白がってオレの名前を出しただけに違いない。
 堀川翼君だもん、怒ったりしないよね。笑いながらみんな標にオレの名前を言ったんだろう。
「最近はみんな小さな夢しか持っていなくて、サポートのしがいがないんですよねえ。どうせサポートするならどかんとでかいドリームを追いかけたいものです。僕が今までサポートした人を教えて差し上げましょうか」
 標はオレの耳に顔を寄せて誰でも知っている有名人の名前をふたつみっつ囁いた。
「すげえ。それって、みんな標君のサポートのおかげなの?」
「まあ、そうですね」
 標は胸をそらせて得意そうに鼻の穴を膨らませた。
「もちろん、あくまでサポート、手助けしただけに過ぎないのですが」
「うまくいかなかったことは?」
「それは」
 標の顔が少し曇る。

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