小説

『おとぎサポート』広都悠里(『一寸法師』)

「まあつまり、さっきおまえが歌ったやつさ。小さな体に大きな望」
「だからオレは普通サイズだって。しつこいぞ」
「よくわかんないけどさ、標に一寸法師的なやつを探しているんだけど心当たりはないかって聞かれて、みんな堀川翼、おまえの名前を言ったみたいだぞ」
「それってオレが学年一身長が低いからか?」
 思わず吠えた。
「よしよし」
 戸倉がオレの頭をなでる。
「学校一だろ?」
 オレは半分本気で戸倉にケリを入れた。
「痛っ。でもさー、ウチデノコヅチがあったら欲しいだろ?大きくなーれ、もっと大きくなーれ……」
「戸倉、ぶっ殺す!」
 身長が人よりちょっと低いってだけで、オレの人生はおちょくられまくりだ。
 そりゃあ背の低い小さなオレが本気で怒ったところで怖くもないだろう。オレだってできることなら怒るより笑っている方が人生楽しい、生きやすい。だから背が低いくらいいいじゃないかと自分で自分を慰めているがクラスの女の子たちに「かわいい」「面白い」と言われることはあっても「格好いい」と言われることはない。
 正直、へこむ。
 オレに彼女ができる日は来るのだろうか。本気で悩んでいるけれど、うっかりそんなことを誰かに言ったりしたら大笑いされるだけだろう。
 身長が高い奴はそれだけで人生、得をしている。一寸法師がウチデノコヅチを手に入れたことが心底羨ましい。
「まあそういうことで、そのうち標くんが君の前に現れるだろうよ、ってキター」
 奇妙なテンションでそう叫ぶと戸倉は笑いをかみ殺したような顔で「じゃあなっ」と立ち去った。じゃあな、って……。
 取り残されたオレは前方に現れたやや長めの前髪をサイドに流した涼しげな目鼻立ちの男を戸惑いながら見つめた。

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