苦痛にゆがむ男の顔と呻き声。引き締まった脇腹がひくひく痙攣している。ある動画サイトに投稿されていた、タトゥーを彫る映像に俺は興奮した。同時に、タトゥーを入れてみたいという衝動に駆られた。別に自分自身を痛めつけるのは好きじゃないが、動画の男の痛がり様に、どれほど痛いのか興味がわいた。早速タトゥースタジオに予約の電話を入れ、施術の日を待った。
左脚の付け根に、小さな蜘蛛のタトゥーを入れた。タトゥーを入れることに興味があったから、デザインはそこまで気にしなかったし、あまりに大きいものだと値も張るのでやめておいた。骨に近い部分だったせいかかなり痛かった。じくじくと針で肌がえぐられ、インクが植えつけられる。施術が終わると、黒い五百円玉サイズの蜘蛛がちょこんと俺の腰骨に居座っていた。
タトゥーを入れた翌週、俺の所属しているテニスサークルに女子が三人入った。このサークルは真面目に活動している奴はほとんどいなくて飲み会ばかり、いわゆる飲みサーだ。三人は友達同士だと言ったが、これは一目で嘘だと分かる。派手な髪色と流行のファッションに身を包んだ二人は気が強そうで、正直近寄りがたい。二人とは対照的に、気弱そうな女子が一人。長い黒髪に顔が隠れている。
「中川愛美でーす！ まなみんって呼んでください！」
「河合瑠莉奈でーす」
「あ、あの…、園田朝美です。よろしくお願いします…」
自己紹介もほどほどに、サークルの活動が始まった。
