小説

『ゆみこと柱神さま』はやくもよいち(『天道さん金の鎖』)

七歳になったばかりのゆみこは、夏休みにママと二人で、岩手県のおじいちゃんとおばあちゃんの家にお泊まりに来ていました。
十日ほどたったある夜、ママのおなかが急に痛くなって、おじいちゃんが車で病院へ連れて行くことになりました。

「ほんと、たいしたことないのよ。おじいちゃん、大げさなんだから」

ママのおなかには、十一月に生まれてくる赤ちゃんがいます。
何かあると取り返しがつきません。

「お昼ごはん、食べ過ぎちゃったかしら」

ママはおどけた口ぶりで笑わせようとしましたが、みるみるうちに顔が青ざめていくので、ゆみこは心配になりました。

おばあちゃんはママの妹、真弓おばさんの家へ泊りがけで行っています。
パパはお仕事が忙しくて、一緒に来ていません。
ゆみこ一人で、おるすばんをすることになりました。

「やっぱり一人でおるすばんなんて、やだ」

ゆみこは二階の窓から、遠ざかって行く車に向かって文句を言いました。
何があっても玄関や勝手口を開けてはいけないと言われているので、ママたちを見送るにはそこしかなかったのです。

「早く帰ってきてね」

階段を下りると、家のあちこちがぎしぎし鳴りました。
古い家なので、こわれないかと心配になります。
使いこまれた木の階段、柱や床は黒ずんでいて、見るからにぼろでした。

台所の柱にかけられている「柱神の面」が、カタカタと音を立てます。

ゆみこはおどろいて目をこらしましたが、変わったところはありません。
なん百年もむかしからあるという、しわくちゃじいさんのような木彫りの面が、柱に打ったかけ釘にひもで吊るされているだけです。

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