管理され鬱屈した工業都市の一労働者である石山は、単純な仕事にやる気を見出せず、単調な日々を送っていた。ある日職場にやって来た細竹さんに褒められることで、もっと認められたいと仕事に精を出すようになったが、細竹の正体を知り元の木阿弥となる。
伯父さんは「人の役に立ちたい。喜ばれたい」と思っていましたが、両頬から蜜柑(実際の蜜柑)が生ることを気にして家に引きこもっていました。伯父さんは家の前で蜜柑の正体を隠して配りはじめます。蜜柑は評判になりますが、やがて秘密がバレます。その後、意外な効果が明らかになるのでした。
復讐のため、自分を殺した夫婦のもとに生まれ変わった少年がいた。彼は報いを与えた後、山奥で一人ひっそりと暮らすようになる。起伏のない毎日を、余生だと思い暮らす日々。ある冬の日、宿を求めてきた娘と共に暮らすことになり、彼の人生は一変する。しかし彼女の正体は意外なものだった。
北の日本海側で暮らす漁師の男は、ある日、浜で歌う女に魅了される。海に消えた不思議な女を忘れられず、毎晩お宮の灯籠を燈しにいく男には、里という美しい許嫁がいたが、心を読ませぬ里を愛する事はできずにいた。ある晩、燈を灯した後、ふとお宮に戻ると、そこには灯籠を眺める裸の女がいた。
見習い海女をしている高校三年生の美波は、進路希望面談をきっかけに将来について悩む。家族に都会の大学に行くといいと言われ、海女になりたい気持ちを抑えようとするが、海女漁でのある出来事をきっかけに家族に気持ちを打ち明ける。家族との間にあった誤解が解けベテラン海女になることを目指す。
音楽一家に生まれた奏恵はチェロ演奏者として活躍する兄とは違い音楽の才能がなかった。兄の音楽教育ばかりに熱心な両親に、彼女は疎外感と孤独感を抱えるが、絵を描くことに熱意を見出す。それを見下す兄との喧嘩で彼の心情を知るが、彼女の心は揺らがず、兄に復讐するためチェロの弦に細工をする。
中学二年の冬、葵は幼馴染で親友の泉の顔に、傷が残るケガを負わせてしまう。葵は自己嫌悪から泉に向き合うことが出来ず、謝ることもできないまま、後悔を抱き続けていた。同じ高校に進んでも没交渉のままだったが、高1の文化祭の日、葵は泉の顔を写した写真部の作品を目にし、撮影者から話を聞く。
視力を失った人気芸人が、生活支援者であるサポーターとの点字のやり取りを通じ、売れていた時代には見えていなかった“支えてくれた人の存在”に気付く話。
その日、僕は死のうと思った。太宰を目指して書いた文章が、陳腐なものに思えたから。そんな僕が死の縁で出会った彼女は、僕を太宰と呼び、自身を与謝野晶子と名乗った。それから簡単に僕の生殺与奪の権を握った。廃墟ビルの上で、僕らは交わす。言葉を、文章を、そして彼女が送った、一つの詩を。