『モザイクピース』
小山ラム子
(『青い鳥』)
クラス委員長の山下くんに文化祭の宣伝ポスターを頼まれた美知佳。真摯にその依頼をこなすが、山下くんは事の次第をねじまげて先生に伝えていた。ショックを受けた美知佳は「もういいように使われないぞ」と決意するが、気弱な野田くんが作業を押し付けられているのを見てその決意が揺らぐ。
『風よ、とまれ』
吉岡幸一
(『ドン・キホーテ』)
強い風の吹く午後、トキと幼なじみのテテは海辺の崖の上にたつ風車(風力発電用風車)のある場所まで来ていた。トキは、風車が回っているから風が吹いていると言って、風車の羽を壊して止めようとした。町を風から守って人の役にたつ、という気持ちから起こした行動だったが、風車は止まらなかった。
『怒りで失敗した人生、やり直してみませんか?』
ウダ・タマキ
(『北風と太陽』)
口論の末、妻を殺してしまった男性が見つけた怪しげな店。看板には『怒りで失敗した人生、やり直してみませんか?』と書かれている。一見するとバーのような雰囲気のその店は、実は感情コントロールによって世界平和を研究する機関だという。
『ヤッちゃんのわらしべ』
十六夜博士
(『わらしべ長者』)
マンションの清掃員のヤッちゃんはとても親切で、僕とアカネちゃんが学童保育から帰るときにいつも迎えに来てくれていた。そんなある日の帰り道、僕らは弱った子猫を拾った。ニャン太と名付けて育てることにした僕たちはとても楽しい日々を過ごしていたのだけど、ある日、事件が起こってしまった。
『蜘蛛の意図』
財賀真理
(『蜘蛛の糸』)
誠四郎の前に現れた蜘蛛。誠四郎は会社の後輩である結崎の彼女を愛人にしていた。その密会を結崎に見つかり誠四郎は窮地に。そこに再び現れたのはあの蜘蛛。実はその蜘蛛は妻の由美子が誠四郎を監視するために買った「カメラマイク付GPS搭載自律型ロボット」だった。
『虚栄のトリビュート』
反橋わたる
(『賢者の贈り物』)
夫婦は貧乏でお互い相手のせいだと思っていた。虚栄心が強く夫は金時計、妻は美容院で整えた髪を自慢していた。そんな二人に同窓会の案内が…夫は寝ている妻の髪を切って売り時計鎖を買い金時計に付けようとするがない。家に帰ると妻が金時計と交換したべっ甲櫛を持ち怒りに震えていた。悲劇が起こる。
『三人の今にも吹き飛ばされてしまいそうな家』
社川荘太郎
(『三匹のこぶた』)
無職の一郎、二郎、三郎の兄弟は母親から早く家を出て自立するように頼まれていた。三人はそれぞれ小説家、ユーチューバー、公務員の夢に向けて活動しており家を出るつもりはなかった。そんな折、三人は挫折を経験する。三人は家を出て自立するしかないのか……。
『嘘と百年』
和織
(「カインとアベル」「夢十夜(第三夜)」)
「兄さんは自分の嘘と父さんの言葉で、自分に呪いをかけちゃったんだね」背中におぶった少年が、まるで違った声と口調でそう言った。私は思い出した。自分が嘘をついたときのことを。嘘をついた私は、父によって世界から追放されたのだ。私がそれ以上誰も傷つけないように。私が誰からも傷つけられないように。