『洋ちゃんと真理ちゃん』
佐々木ささみ
(『ヘンゼルとグレーテル』)
幼い洋治と真理はお菓子のたくさんある家で、両親の帰りを待ちわびていた。いっこうに帰ってこない両親に代わって、お世話をしてくれるのは優しいおばあちゃん。しかし、洋治と真理は、おばあちゃんは嘘をついているのではないかと不安になり、問いを投げかける……。
『ななつ山』
はやくもよいち
(『杜子春』)
陽人は化石を探しに「ななつ山」に来ていた。言い伝えではこの山で木を伐ったり、岩石を切り出したりしてはいけないという。ところが母親は、陽人の止めるのも聞かず石を割ろうとする。とつぜん現れた山神に、二人は連れ去られてしまった。罪に問われた母親を救うため、陽人は試練を受けることになる。
『不動産王』
渡辺鷹志
(『わらしべ長者』)
山奥でひっそりと暮らしていた不動は、ある日知人から知人の所有する山と不動の持つ山を交換してくれないかと頼まれる。人のいい不動は頼みを聞いて山を交換してしまう。すると、不動が交換して手に入れた山の価格が急上昇し……
『君という銀貨』
小山ラム子
(『星の銀貨』)
いつも面倒事を押しつけられているクラスメートの星野のことが気になる鈴岡。一人で掃除をする星野を手伝ったことから二人は友達になる。『困っている人を助けてあげられる人になりなさい』という母の言葉を守っているという星野に、鈴岡は「利用されてるだけだ」と言ってしまい……。
『スワンプボーイ』
泉鈍
(『沼』『沼地』芥川龍之介)
仕事でもプライペートでもちっともうまくいかない。そうなってしまえば、もはや酒を飲むしかないが、行きつけの店はとある事情ですっかり通い辛くなってしまった。何かありやしないかと帰り道を逸れて、見知らぬ路地を曲がって曲がって曲がって。一軒のバーと出くわした。
『幸せな泡』
中村久助
(『人魚姫』)
人間の王子に恋をして泡になった人魚は、泡として海に残っていた。彼女は王子に未練はなかったが、一つだけ心残りがあった。それは彼女の五人の姉たちのこと。姉たちは、彼女が泡になってからずっと、悲しみに暮れていた。
『恋と影』
和織
(『死と影』)
「ママ」の笑顔もあの場所も、ただ一人の男の為のものだった。気づかないうちに動いていた気持ちは、恋未満のまま、外堀すら完成せずに留まり、そのまま朽ちて、僕の中に残ったのだ。