『ずおん』
ノリ・ケンゾウ
(『雀こ』太宰治)
小学生の先生をやっているオサムのもとに、マロサマが転校してきた。マロサマが来てからというもの、児童たちの様子はおかしくなった。ずおん、ずおん、と不可解な言葉を発しはじめたのである。
『キッズ』
ノリ・ケンゾウ
(『猿ヶ島』太宰治)
僕らにしか見えない景色、ってリュウは言うけれど、僕は何も見えなくたっていいから、誰にも見られないところへ行きたい。僕らは見ているんじゃなくて、見られてるんだ。リュウ、もう逃げよう、僕ら逃げないと。けれども僕の声はきっとリュウには届かない。リュウは逃げたいわけじゃないから。
『白波の浦』
山風大
(『伊勢物語 第六段芥川』)
大学の夏休みにサークルの合宿でやって来た海辺の街。メンバーの朱音は、密かに好意を寄せる先輩・有村を誘い、夜中に合宿所から抜け出す。しばらくして、二人の姿のないことに気づいた有村の彼女・七海は、彼らを探しに行くことになるのだが……。
『Tokyo山月記』
両成敗
(『山月記』)
引きこもりの人間が獣になる病気が蔓延している現代。市役所の職員、三ノ輪梓はケースワーカーとして潜在患者、内田真という青年の家に面談に訪れる。真は要領をえない話ばかりをするが、それは次第に梓自身の心に変化をもたらす。梓は、真は木であり、自分もまた木へ変態していく過程にあると気づく。
『ロミオとジュリエツコ』
橋本雨京
(『ロミオとジュリエット』)
樹里(キサト)恵津子は、高校生の頃「ジュリエツコ」というあだ名で呼ばれていた。卒業後、八年ぶりに再会してしまった須藤美沙に、露見(ツユミ)修(オサム)、通称「ロミオさん」を、強引に紹介されてしまった。
『あ/め』
澤ノブワレ
(『飴を買う女』)
駄菓子屋を営む男。毎夜飴を買いに来る女をひょんなことから不審に思うようになり、ある夜あとをつけていくのだが……。
『夏光』
藤野
(『紫陽花』)
遠い夏の日の記憶。兄と私が紫陽花の咲き誇る庭で遊んでいると、着物姿の美しい見知らぬ女性が現れ、兄を見つめて声をかけた。「私にも氷をいただける?」
『ワールズエンドキャッスル』
もりまりこ
(『城』)
遺品保管のレンタル倉庫会社に勤めている遥の仕事場のブースに、内線しか通じなかった電話に近頃外線がまじるようになっていた。ある日、道に迷った男の人から電話が入る。「ワールズエンド・キャッスル」まで行くにはどうすればいいのかと。その人は、何かを測りにそこに行きたいのだと切羽詰まっていた。
『どこからが未来でとわこで俺たちで』
もりまりこ
(『一寸法師』)
俺は海辺でぼんやりしていたある日、あるちいさなひとと知り合った。
とっても甲高い声いやな声でなにかをつぶやくその人は、マラカスみたいなものを持っていた。俺が、それを一振りしたら、俺の知っていた世界が俺のしっているようで知らない世界を教えてくれた。