「食い物! 食い物! 食い物!」
なんでもいい、食えるものなら。
それ、求め。
全てのものが、挙動不審。
目線を、右往左往。
ギラギラ、鋭く漂わせ。
叫び続け、ぞろぞろと。
群れと化して、歩いている。
正確にいうなら、イヌかなにかの動物のように、四足でないだけだ。
かろうじて、手が地面スレスレに、なりながらも、前足にならずにいるからだ。
歩いている。
だが、もはや2足歩行の、人間でなくなる寸前だ。
ちょっと前までは、金さえ払えば、当たり前のように、食い物は、手に入った。
別の言い方をするなら、食い物が手に入った国、いや領域、いやいや者も、あった。
と、表現すべきだろう。
勿論、共存する、地球のどこかでは、絶え間なく、餓死者が、存在しつつの話だった。
そんな、不都合な事実は、知らなかった、ことにしてだ。
無感覚?
いや、違う、自分の心の中。
そこでの隠蔽。
《夜と霧》だ。
夜、霧のごとく、人が消えたことを、知らなかった、と。
知っていた者が、答えた。
あの、善良な普通のドイツ市民が、答えた、あれだ。
ナチの時代の。
それと、なにも違わない。